伊藤 弦太 (イトウ ゲンタ)
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私は岩坪威教授(東京大学薬学部、当時)の研究室で、主要な神経変性疾患であるパーキンソン病の病態生化学から研究をスタートし、Dario Alessi教授(英国スコットランドDundee大学)、富田泰輔教授(東京大学薬学部)の研究室を経て、楯直子教授(帝京大学薬学部)の研究室に異動した現在でも、パーキンソン病やアルツハイマー病に関連するタンパク質の機能や性状の解析から発症メカニズムを明らかにするべく研究を進めています。
タンパク質のアミノ酸D-体異性化は細菌の細胞壁合成において普遍的に見られますが、高等生物においてそもそもどの程度生じるのか、その生物学的な役割や疾患発症における意義などは全く分かっていません。ごく最近、serine β-lactamase-like protein(LACTB)がD-アスパラギン酸含有ペプチドを分解するD-アスパラギン酸エンドペプチダーゼ(DAEP)であることを報告しました(Ito and Utsunomiya-Tate, JBC, 2025)。DAEP活性を有するタンパク質は真核生物ではLACTBが初めての例です。
今後は、このLACTBの基質探索などを通じ、哺乳類におけるタンパク質のアスパラギン酸D-体異性化の生物学的な役割や、加齢関連疾患の発症における役割を解析していきます。